「ケース1」 ある病院からの紹介で、訪問診療(日時を予め計画した定期的な往診)を始めることとなりました。保険証の確認や意向を確認するために家族が診療所にいらっしゃいました。 その時に、初診料を算定しました。
不可 
初診料は算定できません。初診料は患者の傷病について診療行為があった場合に算定するもの。(参照:医学通信社 診療点数早見表(俗に言う白本) P34 初診料についての原則
診察は、医師と患者が直接対面して行われることが基本である。
        
◘医師法第20条等における「診察」とは、問診、視診、触診、聴診その他手段の如何を問わないが、現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものをいう。(参照:医学通信社 診療点数早見表 P47 再診料・「遠隔診療」基本的な考え方) 
参考:医師法第20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。
余談:当院での対応。訪問診療を始める前の家族面談について。面談料はあらかじめ設定しておき、家族からの電話で面談の予約を受けたときにお伝えしておきます。
http://www.houko.com/00/01/S23/201.HTMhttp://www.houko.com/00/01/S23/201.HTMshapeimage_4_link_0shapeimage_4_link_1
「ケース2」 月に2回訪問診療をしている患者の家族から、「いつもの便秘薬がなくなったので、処方してほしい」と診療所に直接いらっしゃって申し出がありました。 その時に、再診料を算定し、処方箋を発行しました。
可 
やむをえない事情で、看護に当たっている者(ただし家族を想定しており訪問看護師は該当しない)から症状を聞いて薬剤を投与した場合においても、再診料を算定できる。しかし外来管理加算は算定不可。(参照:医学通信社 診療点数早見表 再診料)
「ケース3」 月に2回訪問診療をしている患者の訪問看護師から、「いつもの便秘薬がなくなったので、処方してほしい」と診療所にFAXで連絡がありました。訪問看護師に診療所に寄ってもらい処方箋を渡すことにしました。 その時に、再診料を算定し、処方箋を発行しました。
不可 
看護にあたっている家族は可ですが、看護師は該当しないとなっています。
「ケース4」 月に2回訪問診療をしている患者のヘルパーから、「いつもの便秘薬がなくなったので、処方してほしい」と電話で連絡がありました。ヘルパーに診療所に寄ってもらい処方箋を渡すことにしました。 その時に、再診料を算定し、処方箋を発行しました。
不可 
投薬は本来直接本人を診察した上で適切な薬剤を投与すべきであり、看護師やヘルパーからの連絡では再診料は算定不可。処方箋も発行できません。
「ケース5」 月に2回訪問診療をしている患者から、「いつもの便秘薬がなくなったので、処方してほしい」と電話で連絡がありました。医師は、処方箋を発行し隣の調剤薬局に直接持って行き、薬剤を患者に届けるように指示をしました。 その時に、再診料を算定し、処方箋を発行しました。
不可 
医師が処方箋を特定の薬局に持ち込んではならない。
「特定の保険薬局への誘導の禁止」保健医療機関は患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示を行ってはならない。(参照:医学通信社 診療点数早見表  療養担当規則)
「ケース6」 月に2回訪問診療をしている患者から、「いつもの麻薬の鎮痛剤がなくなったので、処方してほしい」と電話で連絡がありました。医師は、次の訪問診療で処方箋を発行しました。しかし、患者は自分で薬局に行くことが出来ず、訪問看護師に処方箋を預けて薬剤をとりに行くように頼みました。 訪問看護師は薬局に行き処方箋と薬剤を引き替えました。
可 
患者の病状などの事情により、患者が麻薬を受領することが困難と認める場合には、麻薬処方箋の交付を受けた患者またはその看護にあたる家族の意を受けた患者の看護にあたる看護師、ホームヘルパー、ボランティアなどに麻薬を手渡すことができる。(参照:厚生労働省医薬食品局・監視指導・麻薬対策課 「薬局における麻薬管理マニュアル」)




http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/mayaku_kanri_02.pdfshapeimage_14_link_0
「ケース7」 月に2回訪問診療をしている患者から、「いつもの麻薬の鎮痛剤がなくなったので、処方してほしい」と電話で連絡がありました。医師は、次の訪問診療で処方箋を発行しました。しかし、患者は自分で薬局に行くことが出来ず、たまたま来てくれたケアマネージャーに処方箋を預けて薬剤をとりに行くように頼みました。 ケアマネージャーは薬局に行き処方箋と薬剤を引き替えました。
可 
ケース6を参照。薬局は、不正流通等防止のため、看護師などが患者の意を受けた者であることを書面、電話で確認してください。さらに、患者が交付された麻薬を指示通り服薬していることを、患者または患者の家族を通じて随時確認してください。(参照:厚生労働省医薬食品局・監視指導・麻薬対策課 「薬局における麻薬管理マニュアル」より)





http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/mayaku_kanri_02.pdfshapeimage_16_link_0
「ケース8」 毎週訪問診療をしている患者に、鎮痛剤の座薬を処方しました。訪問薬剤指導を担当している薬剤師より、患者の家から電話がありました。「今痛みがあるので、薬剤師に座薬を入れてほしい」と患者が言っているとの内容でした。医師は、薬剤師に座薬を肛門に入れることを指示し、薬剤師は対応しました。
可 ? 
医師法17条では、医師、歯科医師、看護師などの医療に関する免許を有さない者による医業は禁止されています。しかし近年の疾病構造の変化、国民の医療に関する知識の向上、医療機器の進歩、医療介護サービスの提供のあり方の変化などを背景に、医行為ではないと考えられるものの範囲が広がっているとされます。患者の状態が一定条件を満たしている上で、一例としては、湿布の貼付や座薬挿入の介助も可と考えます。(医行為の解釈について)






http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000g3ig-att/2r9852000000iiut.pdfshapeimage_18_link_0
「ケース9」 毎週訪問診療をしている患者に、鎮痛剤の座薬を処方しました。次の日にヘルパーから電話がありました。「今痛みがあるので、ヘルパーに座薬を入れてほしい」と患者が言っているとの内容でした。医師は、ヘルパーに座薬を肛門に入れることを指示し、ヘルパーは対応しました。
可 ? 
ケース8と同じく可かと思われます。しかし、あくまでも医師法の解釈によるもので、事故が起きた場合の刑事上、民事上の責任については別途判断となります。
「ケース10」 毎週訪問診療をしている患者に、鎮痛剤の座薬を処方しました。その効き目を確かめるために、医師が次の日の朝患者に電話をしました。 その日に電話再診を算定しました。
不可 ? 
電話再診料は、患者または家族から電話があった場合にのみ算定できるという認識です。
◘患者又はその看護にあたっている者から、直接又は間接(電話、テレビ画像等による場合を含む)に、治療上の意見を求められた場合に、必要な指示をしたときには、再診料を算定できる。(参照:医学通信社 診療点数早見表 再診料 電話等による再診) 
「ケース11」 1週毎に訪問診療している患者に、褥瘡ができてしまいました。褥瘡のドレッシング剤は診療所が問屋より購入し、患者に支給し、軟膏は処方箋を発行しました。また褥瘡の保護のためにガーゼ、絆創膏が必要であったため、診療所は家族に自分自身で薬局から購入するように指示しました。
不可  
ドレッシング剤を医院で購入して患者に支給することと、軟膏の処方箋を発行するのは合っています。ガーゼ、絆創膏を患者自身に購入してもらうのは間違いです。
在宅時医学総合管理料を算定している患者の、衛生材料(脱脂綿、ガーゼ、絆創膏)は在宅時医学総合管理料に含まれます。従って費用は診療所で負担します。注射器、注射針、翼状針、カテーテル、膀胱洗浄用注射器、クレンメ等も管理料に含まれるため、患者が費用を出すのではなく医療機関から提供しなければなりません。(参照:医学通信社 診療点数早見表  在宅療養指導管理料の一般的事項)
ケチケチしないで、必要な材料はどんどん使えるようにするのが私の方針です。コスト節約は必要がないほど、今の在宅の点数は高いと思います。衛生材料のほとんど全てを薬局に管理してもらい、私は、物品の輸送、在庫管理はしていません。