2019年7月号
2019年7月号
平成30年度版 腹水穿刺、ドレナージ、在宅患者緊急時等カンファレンス、75歳、男性、肝臓がん
肝臓がんのため、総合病院に通院していたが受診がつらくなったため紹介となった。
まず、同居のご家族と医院で、1時間ほど面談し、今後は訪問診療、往診で対応することとなりました。
ご家族も今の状況を大変心配しているご様子でした。
総合病院では、肝臓がんによる腹水を時々数リットル抜いていた。これからは家で抜いて欲しいとのご希望だった。確かに腹部は膨満しており、定期的な腹水のドレナージが必要であることが分かった。
ある日、腹水を抜くために物品を用意し患家に向かった。腹水をドレナージするために腹部エコー(ポータブルタイプ写真付きで)で予め刺入部位を確認した後に、ドレナージを開始した。 2リットルをドレナージした。排液はトイレに流した。しかしドレナージに要する時間は2時間近くで、その間医師が立ち会った。
このように腹水をドレナージするには、長時間患家に留まる必要があることが、医師にとっては負担がある。腹水のドレナージが頻回になると、医師、看護師が連携して、状態を監視する必要がある。
患者さんの状態も変わってきたため、ケアマネージャーと相談し、自宅でカンファレンスを開くこととした。いわゆる担当者会議です。訪問看護師、介護ヘルパー、訪問入浴の担当者が集まり、今後のケアについて協議しました。
2019年7月15日月曜日
毎日ベッドで寝て過ごしている病身にとって、通院はつらい仕事です。午前8時のろのろとパジャマを脱いで服に着替えて靴を履き、タクシーで病院へ。まず検査室へ行って採血。午前10時の診察を予約していたとしても、待たされること2時間はザラ。診察が終わり、次は会計窓口へ移動してまた延々と待たされます。
会計を終えると、次は病院の玄関を出て横断歩道を渡ったところの薬局へ。薬局の時計を見ると午後1時半。付き添いの家族は健康体ですがそれでもここら辺ですっかりくたびれてしまいます。
薬をもらい帰路につくのは午後2時過ぎ。お腹が空いたのでなにか外食しようとしても病人の口に合うものはないので諦めて、とにかくタクシーに乗り込み、家に帰り着きます。
食事をしたらパジャマに着替えて疲労困憊でベッドに倒れ込みます。時計を見れば午後4時。特に楽しい外出でもないので、このようなつらい一日仕事になります。付き添いの家族も病人を気遣いながらの外出なので一苦労です。
患者さん家族ともに外来受診がつらくなったので訪問診療を受けることになりました。医師や看護師が訪問してくれるだけでなく、薬も訪問薬剤師が家に届けてくれます。こうして患者さんは、病院通いというストレスから解放され、自宅でリラックスして治療を受けられることになりました。
算定:
D251 超音波検査(断層撮影法)(イ胸腹部) 530点
J 010 腹腔穿刺(人工気腹、洗浄、注入及び排液を含む) 230点
C001 在宅患者訪問診療料 833点
5.患家診療時間加算(在宅患者訪問診療料) 200点
患家における診療時間が1時間を超えた場合は、30分毎に100点の加算。
診療にかかった時間をレセプトに記入します。ここでは120分と記入。120分で200点加算です。
病院、診療所のように異常があればすぐに呼べるところに医療者がいれば、ベッドサイドから離れることも出来ます。しかし、自宅の場合は、ルートの自然脱落、ドレナージ不良と行った重篤ではないトラブルから、ショック状態(今までに経験したことはありません)といった合併症の対応も必要です。
どのような監視が必要なのか明確な基準はありません。場合によっては近くの別の患者の所へ訪問診療へ行きまた戻ってくることもあるでしょう。また腹水ドレナージのサーフロー針の抜針は看護師が対応可能かどうかについても明確なガイドラインがありません。現在検討されている特定看護師の医療行為としては、検討されています。(資料)しかし、穿刺は医師、監視と抜針は看護師が対応しているところもあるようです。
介護保険を使っている方なら、ケアマネジャーが担当者会議を企画することがあります。その際に医院では、在宅患者緊急時等カンファレンス料を算定できます。
算定:C011 在宅患者緊急時等カンファレンス料 200点
状態の急変などに伴い、在宅医療担当医が、訪問看護師、訪問薬剤師、介護支援専門員と共同で患家にてカンファレンスを行った場合に月2回まで算定できます。必ず2者以上の参加が必要です。自院の看護師のみでは算定不可です。原則として患家で行いますが、家族が患家以外の場所を希望する場合は他の場所で行っても算定できます。(デイサービスなど)
訪問診療料と合わせて算定できませんが、レセプトに「計画された訪問日と同日に行った」と記入すれば算定できます。
カルテ記載事項:カンファレンスに参加した医療関係職種等の氏名、カンファレンスの要点、患者に指導した内容の要点、カンファレンスを行った日
カルテの記載例
○月×日 水曜日
在宅患者緊急時等カンファレンス
参加者 新城、訪問看護師 ○○看護師、ケアマネジャー ××様、訪問介護事務所 ○×様、訪問入浴 ×× ○○様
カンファレンス内容
1.今後予想される状態について。 腹水の貯留により徐々に状態が悪化しつつあるため、今後はベッド錠での生活となる可能性が高い。
2. 状態の悪化に対しての対応を検討。訪問入浴の導入、褥瘡を予防するエアマットの導入。
コツ
・腹水を抜くときは、2時間程度時間がかかることもあります。その間ずっといることはできないので、私は、玄関先に車を停めてその中で、PCで作業をしたり、本を読んだり、時にはうたた寝をしています。
・今までにも、患者の容態が変わることはありませんでしたが、途中で腹水が出てこなくなり、針の位置を調整する必要がままありました。